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電話が鳴った瞬間、指先がすっと固まる。保留ボタンを押しながら、頭の中では「今言われたこと」と「さっき頼まれた伝言メモ」と「隣の内線が鳴りそうな予感」が同時に渦を巻く。
「早く出なきゃ」「でも、うまく聞き取れなかったらどうしよう」「あ、さっきの伝言、まだ書いてない」——頭の中の声はいつも一つじゃない。気づけば、定時が近づくだけで胃のあたりが重くなっている。
結論から言うと、事務職を苦手だと感じるのは、あなたの能力が低いからでも、要領が悪いからでもありません。
HSP(Highly Sensitive Person、人一倍繊細な気質)と呼ばれる特性を持つ人は、電話対応やマルチタスクといった事務職特有の負荷を、人一倍重く感じ取りやすいことが知られています。
この記事では、HSPが事務職を苦手だと感じやすい理由と、それが「向いていない」と直結するわけではない理由、工夫を重ねてもつらい時の次の一歩までを、当事者の視点も交えて紹介します。
この記事の要点
「事務職は座ってできる仕事だから楽そう」というイメージを持たれがちですが、実際には電話対応・同時並行の作業・人間関係の密度など、HSPにとって負荷の高い要素が重なりやすい仕事です。まずはその正体を、気質の面から見ていきます。
提唱者であるアーロン博士(Elaine N. Aron)によると、HSPは「感覚処理感受性」と呼ばれる気質特性を持ち、その特徴は「DOES」という4つの要素(深く処理する・刺激を受けやすい・感情反応が強く共感力が高い・些細な刺激に気づきやすい)で説明されており、周囲の刺激や人の感情の変化を人一倍深く処理する傾向があるとされています。
出典:エレイン・N・アーロン博士『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』
この「深く処理する」性質は、事務職の日常業務のさまざまな場面に表れます。特に負荷が集中しやすいのが、次の3つです。
電話は、相手の表情も間も見えないまま、瞬時に聞き取り・判断・対応を求められるコミュニケーションです。「聞き間違えたらどうしよう」「うまく取り次げるだろうか」という不安を、鳴る前から感じてしまうのは、刺激や失敗の可能性を先回りして処理してしまう気質と相性が悪いためです。
1本の電話が終わっても緊張はすぐには解けず、次に鳴るまでの時間も気が休まらない——という人も少なくありません。
電話を取りながら来客対応、来客対応の途中で内線、内線を切った瞬間に上司から声をかけられる——事務職は複数の作業を同時並行で処理することが日常的に求められる仕事です。一つのことをじっくり深く処理する気質にとって、優先順位が次々に入れ替わる状況は、人一倍消耗しやすい場面です。
「同時に頼まれたことを全部覚えていられない」「一つに気を取られている間に別のことを忘れる」という感覚は、注意力や記憶力そのものの問題というより、処理の深さゆえに起きやすい現象です。
データ入力や書類作成など、事務職の作業自体は一人で完結するものが多い一方で、「頼まれごとを断りにくい」「先輩の機嫌や職場の空気を常に気にしてしまう」といった人間関係の密度は、想像以上に高いのが実情です。
黙々と作業したいのに、常に誰かに声をかけられる距離感で働くことになる——この落差が、「向いていないのかもしれない」という気持ちにつながりやすいのです。

電話も同時進行も、慣れれば平気になるものなのかな……
慣れで軽くなる部分もあるけど、気質そのものはそう簡単には変わらへんよ。まずは自分がどっちのタイプか、次で整理してみような。
「苦手」と「向いていない」は、似ているようで別の話です。苦手の中には、工夫や慣れでカバーできる部分と、気質そのものに関わりカバーしにくい部分の両方が混ざっています。
まずは、どちらに当てはまるかを分けて考えてみましょう。
ここまでは工夫でカバーできることが多い部分です。一方で、次のような状態が続く場合は、工夫だけでは埋まりにくい気質そのものの部分だと考えられます。
工夫でカバーできる部分から手をつけてみて、それでも消耗が続くなら、それは「向いていない」のサインかもしれません。
僕自身、場の空気を読みすぎて何でも引き受け、抱え込んで潰れたタイプでした。断れずに抱え込むほど、気を張っている時間だけが増えていく——事務職の「断りにくさ」も、この構造は同じです。
断るのが下手なんやなくて、抱え込みすぎてただけやったんよ。自分の意見を言うても潰されへん環境に移ってから、だいぶ楽になった。
頼まれごとを全部背負うことと、事務職を頑張ることは、イコールではありません。抱え込む癖を手放すだけで、同じ仕事でも負荷はかなり変わります。
工夫を重ねても消耗が続き、「本当にこのまま事務職を続けるべきか」まで気持ちが揺れているなら、無理に一人で結論を出そうとしなくて大丈夫です。
「事務職は向いていないのでは」という自己理解の段階から、「続けるか、辞めるか」を具体的に見極めたい段階に進んだと感じたら、事務職 向いてない・辞めたい|続ける?辞める?の見分け方で紹介している3タイプ診断も参考にしてみてください。
今の職場が全部やないよ。合う働き方がどんなものか、知っておくだけでも心の余裕は変わる。
「今すぐ転職する」でなくて大丈夫。どんな選択肢があるのかを知っておくだけでも、「いざとなれば動ける」という心の余裕が生まれます。


向いていないと感じるのがつらくなってきたら、無理に今の職場に留まらなくてもいい。HSPに合う転職エージェントの探し方もチェックしてみてください。
→ HSPにおすすめの転職エージェントの探し方を見る
HSPだけが理由とは限りませんが、関係している可能性はあります。電話対応・マルチタスク・人間関係の密度といった負荷を人一倍重く感じ取りやすい気質であれば、事務職の業務内容と相性が悪く出やすいためです。
続けている人はたくさんいます。トークスクリプトを用意する、メモの型を決めておくなど、事前の準備で緊張を減らせる部分は多くあります。それでも消耗が大きいなら、電話対応の少ない部署や職種を検討するのも一つの方法です。
すぐに辞める必要はありません。まずは工夫でカバーできる部分から試し、それでも消耗が続くかどうかを見極めるのが先です。続けるか辞めるかの見分け方は、事務職 向いてない・辞めたい|続ける?辞める?の見分け方で詳しく整理しています。
一人で集中できる時間が多い仕事や、電話対応が少ない仕事は比較的相性が良いとされます。ただし職種そのものより、職場の人間関係や業務量が自分に合っているかどうかの方が影響が大きいケースも多いです。
事務職を苦手だと感じるのは、能力の問題でも甘えでもありません。電話対応・マルチタスク・人間関係の密度という3つの負荷が重なりやすい仕事だからです。
工夫でカバーできる部分から少しずつ試しながら、それでも消耗が続くなら、無理をしすぎず次の一歩を考えてみてください。
この記事を書いた人|ハリピン(HSS型HSP当事者)
繊細な気質と向き合いながら「自分に合う働き方」を模索してきたHSS型HSP当事者。同じように仕事で悩むHSPさんへ、当事者の視点で発信しています。


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このサイトの運営者・ハリピン(HSS型HSP)です。飲食店の店長から営業、東証一部上場(当時)の子会社で社長を5年、転職は6回以上。…で、いまはほぼ無職5年以上続けてます。社長まで行って無職、自分でもすごい振れ幅だと思うけど、これが、わりと本気で「全然オッケー」だと思ってます。 強みも弱みも、やってみないと分からないもので「接客は好きだけど、料理と在庫管理は苦手」って、飲食やって初めて知りました。英語もパソコンも苦手で試めてたことが、AIに助けてもらいながら少しずつできるようになってきた。——つまり、今この瞬間ダメでも、時間が経てば何かが変わるかもしれない。(無職期間も大事ってこと!) 僕がここでやりたいのは、“自分が死ぬ瞬間に自分の人生が「よかったな」と思える様になるキッカケを作ること”。正直、自分自身もまだ模索の途中で、全然偉そうなことは言えません。…でも、だからこそ同じ目線で考えれるかなと思ってます。 健康、睡眠、大事! 死ぬのだけは禁止で!